「病は気から」の本当の意味

「風邪を引くと思っていると、本当に風邪をひく」 「病気なんて気持ちの持ちよう!」

「病は気から」という言葉を、そんな風に捉えている方は多いかもしれません。実は私も、以前はそう思っていました。

ですが、この言葉の本来の由来は『百病は気より生ず』という古い教え(2000年前の中国医書の古典『黄帝内径』)から来ています。

つまり「気のせい」という意味ではなく、「気力が弱まり、自己免疫が低下することで、身体に病が生じやすくなる」ということ。気が落ち込むことで、身体を守るバリアが薄くなってしまう状態を指します。

この「気」とは、私たちの命を動かしている根本的なエネルギーのこと。

東洋医学では、気の乱れをいくつかのアプローチで捉えます。

ひとつは、気力が低下してしまう「気虚(ききょ)」。実は、西洋医学でいう「鬱」の状態は、この気虚に当てはまります。

そしてもうひとつが、気の流れが滞ってしまう「気滞(きたい)」。 喉の奥に何かが詰まっているような感覚や、胸が重たくつかえる感じ……。これは、梅の種が喉に詰まったような症状から「梅核気(ばいかくき)」とも呼ばれ、気が滞っている身体からのサインです。

西洋では心と身体を切り離して考える「心身二元論」が主流ですが、東洋では「心身一如(しんしんいちにょ)」心と身体はひとつであると考えます。

アロマテラピーで使う精油は西洋生まれのものですが、その本質的な捉え方は、東洋医学の「心身一如」と重なっていることも多いです。たとえば、ハーブティー(植物)の文化。 アフタヌーンティーのような優雅でおしゃれなイメージが強いかもしれませんが、もともとは東洋で生薬を煮出して飲む「漢方」と同じように、西洋でもその日の体調や心の状態に合わせてハーブを煎じて飲む「家庭の薬箱」でした。

西洋でも昔から、体の不調に合わせて「ミントは胃腸に」「カモミールは鎮静に」と、お湯で抽出して飲まれていました。東洋の「煎じ薬(漢方)」と根っこで繋がっています。また、日本にお茶を持ち込んだ栄西禅師が書いた『喫茶養生記』の冒頭には、こんな言葉があります。

「茶は養生の仙薬なり、延齢の妙術なり」

もともとお茶は、禅僧が厳しい修行中に「気力を保ち、心身を覚醒・安息させる薬」として飲まれていたものです。お酒(日本酒)も、古来日本では「命の水」「神様と人間を繋ぐもの」として扱われてきました。東洋医学において、お酒は「百薬の長」と呼ばれ、適量を飲むことで血行を促進し、冷えを散らし、停滞した「気」を一気に巡らせる作用があるとされています(薬膳酒などがその代表です)。神社でのお神酒(おみき)や地鎮祭のように、日本酒には「ネガティブな気や滞りを祓い、清める」という役割もありました。

西洋のハーブティーも、日本のお茶や日本酒も同じです。 アフタヌーンティーやカフェ、お酒という「楽しむための嗜好品」として広まっていきましたが、そのルーツを辿れば、どれも「体調に合わせて気を巡らせる薬」であり、「心と体の濁りを払うための手立て」でした。

時代や国、形が変わっても、「植物や自然の力を借りて、自分の気力や巡りを整える」という人間の知恵は、ずっと昔から世界中で受け継がれてきたものなのです。

少し話はそれましたが、心の問題と身体の症状を一つのものととらえる視点で、私が施術前のお客様との会話で意識しているのは、お客様が感じているコリや辛さだけではありません。

表情、顔色、姿勢、目つき、声のトーン、痛みを感じているところに繋がるライン、香りの感じ方や選び方、そして手にとられた精油……。そのすべてを通して、お客様の「今の気の様子」を見ています。

香りは、滞った「気」を巡らせる大きな力を持っています。

まずはサロンでゆったりとリラックスしていただき、枯渇していた気力をたっぷりと満たすこと。そして、オイルとともに精油を肌になじませることで、固まっていた巡りを心地よく整えていきます。

ご自宅でも日々の暮らしに香りを取り入れていただくことで、その巡りを優しく安定させていくことができます。

アロマというと、「リラックス」「自分へのご褒美」「ちょっと贅沢なもの」というイメージが強いかもしれません。確かに上質な精油は安価なものではありませんし、特別なケアとして扱われることも多いです。

ですが、自分では届かないお手入れを定期的に受けることは、これからどんな未知のウイルスや菌が出てきたとしても抵抗できる「強い身体づくり」のための、とても大切な手立てになります。

「定期的に」と言っても、そのペースは人それぞれ。

大切なのは、自分自身で気力を低下させないこと。停滞させず、いつでも巡らせていける自己治癒力を育んでいくこと。

アロマという手段をそのためのパートナーとして、ぜひ軽やかに活用していただけたら嬉しいです。

もちろん気の巡りには、その土台となる体(骨、筋肉)があってこそ、ということもお忘れなく…

アロマケア前の足浴用フレッシュハーブ。精油とは違うさわやかな香りも感じていただけたら、と思っています。その日に収穫したハーブをミニブーケにしています。今の時期は、パイナップルミント、アロマミント、レモンバームがよく育っています。