黒文字の歴史とアロマのこれから

少し芽吹いてきた、我が家の黒文字

だいぶ知名度も、巷で見抱える事も多くなった日本精油の代表【黒文字】

実は江戸時代より前より使われてきた木材なんです。私も和精油を学んでいなければ黒文字を知ることはなかったと思います。

黒文字といえば、「日本の象徴の香り」といわれるほど、かつては日本の各地で、神事や祭事、行事の他、虫歯の予防に歯ブラシや箸など、身近な生活品として使われていました。

今でも残るのは、茶道で欠かせない、お菓子をいただく時の爪楊枝。中でも千葉県君津市久留里では江戸より残る黒文字楊枝名産地。その名も【雨城楊枝】は千葉県指定工芸品になっていて、かつて久留里の地にあった久留里城(別名雨城)があったことから、この名がついているそう。

また、黒文字は生薬としても使われてきました生薬名は【烏樟】【釣樟】【釣樟根皮】

枝の水溶液は去痰に。

民間療法でも、煎じて脚気や急性胃腸炎、粉にして、止血、温泉やお風呂に入れ(薬湯)、病気や怪我の治療目的に使われていました。

日本の【薬用養命酒】に含まれる烏樟エキスは黒文字の事。

各地に残る呼び名も多く、北海道、東北、新潟、京都はトリシバ、トリノキ、トリコノキなど鷹狩りの獲物を贈る際に、結び付ける枝に黒文字が使われていたり、狩りで獲った獲物を黒文字の枝に挟み、山の神にお供えしていたことから、トリが付く呼ばれ方が多い。

岐阜をはじめ、山陰、滋賀、山形では、もちを黒文字の枝に付け風習があり、モチノキ、モチギノキなど、モチとつく呼び名が多い。

黒文字は100ほどの呼び名があるほど、昔から日本人とのかかわりが深い木でした。

その風習も、時代と共に薄れ、それを伝える人も伝統行事も、行われなくなり、いつの間にか、関わりも無くなり、黒文字を使う機会も減ってしまった。

それを新たに注目させるきっかけになったのが、精油(国産アロマ)。日本のローズウッドとして、注目され、アロマセラピストなら、だれでも知っている精油になってきました。

精油としての働きは、モノテルペンアルコール類のリナロール、が多く含まれているので、抗菌性、抗ウイルス性があり、免疫調整の働きがある1.8シネオールも少し含まれています。コロナウイルスやインフルエンザにも抑制作用がある事がわかってきました。その他、睡眠の質の向上、抜け毛予防、肩こり腰痛などの関節痛にも有効とされています。

ローズウッドはかつて、シャネルの5番に使われたことをきっかけに、多くの企業が、目を付け伐採し、絶滅危惧にまでなってしまった歴史があるのですが、

日本の黒文字も、注目されすぎて、本来使われてきた産業に黒文字が回らなくなってきている現状もあるそう。先ほどの千葉の伝統工芸品【雨城楊枝】もそう。

黒文字は香りもしっかり香る木になるまでに5、6年。そしてあまり大きくならない。我が家にある黒文字で8年。そして、精油にするために、精油瓶1本(5ml)当たり7.5リットル分の黒文字の枝葉が必要です。市場にどのくらいの黒文字が出ているか、わかりませんが、、どう考えても、成長と使用量の割合が合わないような気がしています…。

黒文字で町おこしを頑張られている地域もたくさんありますが、逆に、本来使われるべきところに黒文字が届かなくなってしまっている悲しい現状。

日本人には、日本の香りが身体と心の循環によく合う、更に日本の香りを使う事で、使われていない木を使い、森を循環させることに繋がる、そんな思いで、日本の香りを使っている私としては、注目され過ぎたことで、本来あった循環を壊してしまう事に繋がりつつある現状が辛い。

黒文字を知ってくれる人が増えたことは、とても嬉しい事。でも使う側は、きちんと現状も知る必要がある、と思います。いいものをどんどん商品化して、売るだけ売って、あとから参入してきた人が儲かって、もともと頑張って繋げてきた人たちが苦しむ事は、あってはいけない事。

一人で、この動きを止める事はできませんが、どうか、これを読んでくださった方、一人ひとりが、黒文字の良さも、歴史も、現状も知ったうえで、黒文字一滴の貴重さを感じていただければと思います。

また、巷に出ている黒文字を見かけたら、どんな企業がどんな目的で、どんな思いで作られた黒文字精油なのか、一度考えていただければと思います。

精油は黒文字だけに関わらず、どの精油にも言える事ですが、きちんとした精油の原料は植物のはずです。一年で育つハーブなのか、どんな環境で、どのようにして育って、どのように抽出されたのか、植物は環境によって成分も香りも変わります。なので、商品にする、大量に作るのは難しいはず。

なのに、これだけアロマが出回っている事に、買う側も疑問を感じないといけないのかもしれません。

香りの歴史は古く、紀元前からあります。香りは世界中で、それそれの地域の問題を解決したり、生活を豊かにするために使われてきました。日本には日本の香りの文化、歴史があります。精油を香りを日本でどう使う事が、日本人に合うのか。そこが日本のアロマセラピストとして考えていければいいな、と思います。

香りを希釈して、身体に塗布することで、巡りを整える、自分で巡らせる力をアロマの力で補う、気持ちが安らぐ、とても大事。特に、我慢強い人は、我慢を開放したり、緩める事、ON、OFFの切り替えを植物の香りでする事が必要です。ただ、その土台となる身体を作っているのは、日頃の食事。いくら巡りを良くしても、巡らせているものが悪ければ、、悪いものが廻っているだけになってしまします。

香りと一緒に、普段食べているものも考えてるきっかけなれば、と思います。食べるものは、その地域で、今の季節に育ったものを、シンプルに頂く。それが身体に合う食事です。

黒文字から、話が飛んでしまいました…

最後まで読んでいただきありがとうございました。香りの歴史についても、またどこかで触れたいと思いまいます。