春来自草生 ~冬の底で芽吹きのときを待つ~

庭の枯葉を、指先でそっとめくってみる。 そこにはもう、小さな緑の息吹が隠れていた。
禅の言葉に、**「春来たらば自ずと草生ず」**というのがある。 冬の寒さでカラカラに乾いて、命が途絶えたように見える庭だって、春が来れば、誰に言われなくても自然と芽吹く。 物事にはしかるべき「時」があって、無理にこじ開けなくても、満ちるべき時に結果は訪れる。 ……そんな、自然の理(ことわり)。
もし、今。悲しいことや、辛いことの中にいるなら。 「早く切り替えなきゃ」「前を向かなきゃ」って、自分を急かさないでほしい。
泣きたい時は、とことん泣けばいい。 落ち込んだ時は、無理に立ち直ろうとなんてしないで、底に着くまで沈んでみたっていい。 暗闇の底をトントンと叩いて、ようやく「ここが底か」って落ち着ける場所を見つける。 人はそこから、ようやく自分のリズムで一歩を踏み出せるようになる。そんな気がする。
桜の開花時期が地域によって違うみたいに、傷が癒える速さだって人それぞれ。
これまでに傷ついた経験が多いのは、それだけ自分なりの「癒し方の地図」を必死に作ってきたという証拠。 だから、辛い時間を引きずることは、決して悪いことじゃない。
ただ、もし私の経験が、いつか誰かの役に立つのなら。 辛い渦中にいる人に「大丈夫、そのままのあなたでいい」って寄り添いたい。 その時間が少しでも穏やかなものになるように、そっと隣にいたい。 無理に助け出すんじゃなくて、その人の「春」が来るのを、一緒に待てるような。
……その場所で、行く先を照らし、もし道に迷っても、またいつでも戻ってくこれる目印のような灯台の光でありたい。
今日の香り:レモンバーム
庭の小さな芽を指先でなでると、ふわりとレモンのような、甘く清々しい香り。
レモンバーム。 大きなショックや緊張で、心が石みたいに固まってしまったとき。 そっとその強張りを解いてくれる、「救済の香り」。
2月から4月。 環境が変わって、「ちゃんとやっていけるかな」って不安が膨らむ季節。 この香りは、その不安を否定せずに受け止めて、また歩き出すための静かな元気をくれる。
わが家の庭のレモンバームも、今はまだ枯葉の布団の下でタイミングを伺い中。 焦らなくていい。 その時が来るまで、私も一緒に待ってるから。
