【松樹千年翠】しょうじゅせんねんのみどり

大切なものはいつも目の前にある

松の樹は千年もの長い間、美しい緑を保ち続けている、というのが直訳だそう。

いつもあるものの大切さや、美しさには気が付かず、別の場所に美しさを求めてしまいがち。でも実際は常に自分自身の目の前にあるものが大切な事。変わらないものこそ大事な事。それは人の心。子どもが生まれた時の喜び、大切な人を亡くした時の悲しみ、そういった時代が変化しても変わらない心の中に大切なものがある

と、心が揺らぎそうなとき、節目の時、読むようにしている桝野俊明(ますのしゅんみょう)さん著【おだやかに、シンプルに生きる】に書かれいます。

日本はこの100年で大きく変化してきました。色んな事が便利になって、不便なもの、手間がかかるもの、面倒だった事がどんどん楽になっていっています。料理や掃除は時短、楽して稼ぐ、わからない事はすぐ検索…

その変化に追いつこう、と私たちも必死に変化しようとして、今の日本は大切なことが置いてけぼりになっている気がします。

ハーブもその一つ。もともと日本はハーブの国でした。ハーブという言葉ではありませんでしたが、いつも生活の中に、身近な植物を役立てて生活をしていました。例えば、ドクダミ。ドクダミ茶は今でも売られていますが、実は日本三大和薬の一つで、皮膚の炎症に使われたり、解毒やむくみの緩和に使われていました。

今は何かあれば、病院があり、薬が買え、足りないものはサプリを飲み、栄養ドリンクを飲み、食材はスーパーに宅配、ネットショップ、なんでもすぐに手に入る時代になりました。

昔は、薬局もスーパーも無かったので、家の周りに生える草木が薬や食材でした。それを活用しながら、健康を維持していました。そうできる術を親から子へ引き継がれていっていました。

私が扱う日本の精油も、そもそもは、生活になくてはならない日用品や食材、薬となっていたもの。

日本にはそんな植物を使って暮らしてきた文化がありました。

それが、この100年のうちに大きく変わり、外国の精油が広まり、日本にはない華やかで強い香りが好まれ、使い方も伝え方もバラバラな状態で広がっています。人が植物の良い香りだけを抜き取って、人工香料も作ってしまいした。

精油は使い方を間違えれば、毒にもなります。香りの成分は、植物が外敵から,身を守るために作る2次産物。それがわかっているセラピストさんも一生懸命それを伝えていますが、間違った伝え方をしている方も多くいます。精油は香りを楽しむ、香りで心を豊かにする、やすらぎを与えることが第一の目的です。その心の安らぎで、緊張が緩んで痛みが緩和したり、副交感神経が優位になり、免疫力が調整されるんです。どんなに効果を言われても、決して飲んだり、直接原液は使ってはいけません。

食事も変わりました。よりはっきりした味付けが好まれるようになり、簡単に味付けができる調味料が増え、濃い味に慣れてしまっている子どもも多い気がします。

子どもの食事はマックにスーパーのお惣菜、サプリを飲んでるから大丈夫、とサプリを進めてくる親御さんもいるそうです(汗)サプリは体の中でどう作用しているかわかりません…。

色々な事が便利になり、情報も溢れ返っています。

庭で育てるのは、ラベンダー、ローズマリー、カモミール…外国のハーブを育てる事、食事に取り入れるのがおしゃれと、外国文化に魅力を感じさせようとしてきた日本の社会。

少し前に置き忘れてしまった日本の植物文化、家庭の風景。もともとは目の前にあった、日本の風景を思い返す事が、今こそ大切だと思い、この禅語を選びました。

大切なものは目の前にあります…変化すること、変化に追いつくことだけが大切ではないと思います…時には、スマホから離れ、情報を遮断してみるのもいいかもしれません。